「こんなの誰も見ない」――就業規則の価値を改めて感じた出来事

日常の疑問

突きつけられた言葉
先日、就業規則のお打ち合わせの際、あるクライアント様よりこんな言葉をいただきました。
「就業規則なんて、普段は誰も見ないよ」「就業規則の作成はたいしたことない仕事だ」
就業規則を作成する仕事に誇りを持っている私にとって、正直、とても悲しい言葉でした。

ただ、その会社では就業規則が最初に作成されてから、十数年が経っていました。実際、日常の中で就業規則のページをめくる機会は、ほとんどなかったのだと思います。それでも会社は回り、事業も続いてきました。クライアントがそう言われるのも、無理はなかったのかもしれません。

迫られる「想定外」の対応
ですが過去には、いくつかの問題が起きていたようでした。
「ハラスメントや長時間労働をきっかけに、欠勤が続く社員」
「入社したばかりで、欠勤が続く社員」など人の問題について、「一体、どう対応すればいいのか分からない……」と悩まれていた事があったようでした。

こうした緊迫した状況の時こそ、本来は就業規則が「会社のルールブック」として力を発揮します。
「休職制度はどのように適用するのか?」
「試用期間を延長するべきか?」
「面談や指導のステップはどう進めるべきか?」
これらが就業規則にしっかり定められているからこそ、会社は感情に流されず、一貫した正しい判断ができるようになります。何かあった時にこそ、就業規則が会社の大切な「ものさし」の役割を果たします。

身近な「取扱説明書」のハナシ
確かに、就業規則は、普段はあまり読まれないかもしれません。ですが、それは逆に“何も起きない、平和な状態を保つため”に存在している面もあります。

実は最近、自宅のヒーターを掃除した時にも、似たようなことがありました。私はずっと「蓋は上下に開けるもの」と思い込んで触っていたのですが、実際は左右に開くタイプだったのです。「説明書を見ればすぐ分かること」なのに、自分の経験や感覚だけで進めたせいで、余計な時間を費やしてしまったのです。

職場での人についての悩み事も、これと少し似ている気がします。経験や感覚だけでトラブルに対応しようとすると、どうしてもその時々で判断がぶれてしまいます。だからこそ、会社という組織にも“取扱説明書(=就業規則)”が必要なのです。

言葉に込める、想い
確かに、就業規則は、AIが作成することもできますし、ひな形をそのまま会社の規程として運用することもできます。ですが、就業規則の作成に関わる際、一つひとつの文言に意味を込めながら、言葉を積み重ねています。

「この表現だと、いざという時に会社が困るかもしれない」
「このケースでは、この規定があることで会社も働く人も救われるかもしれない」
そんな未来に起こる出来事のディフェンスラインを想像しながら、仕事に携わっています。

就業規則は、単なる書類ではありません。
“会社と、そこで働く大切な人を守るための頑丈な土台”であると思っています。そして、会社が従業員さんに何らかのアクションをおこす際の大切な根拠ともなります。職場で気持ちよく、安心して働いて頂く為にも、これからも一つひとつの言葉に命を吹き込んでいきたいと、改めて強く感じています。

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