「結婚、妊娠は困る」と言われた20年前。時代を越えて考えること

日常の疑問

「結婚したら困る」と言われた面接室

20年ほど前、私が転職活動をしていた頃の話です。ある企業の面接で、中高年の男性面接官からこんな言葉を投げかけられました。

「すぐ結婚して妊娠されたら困るんだけど、そういう予定はないの?」

今振り返れば完全にアウトな質問ですが、当時はそれほど珍しいことではありませんでした。まだ20代だった私は、仕事を探し、自分の生きる糧を得ることに必死。その言葉を言われた時、「この社会で生きていくなら、結婚や出産を考える時期は、仕事を諦めるしかないのだろうか」と、胸がキュッとなるような不安を覚えたのを今でも鮮明に覚えています。

仕事か家庭か。どちらかを選ばなければ、どちらも手に入らない。そんな考えが何度も頭をよぎった事もありました。

法律は変わった。では、現場の「空気」は?

それから、令和の時代、世の中は大きく変わりました。

現在では、妊娠・出産を理由とした不利益な取扱いは法律で禁止されています。いわゆる「マタニティハラスメント(マタハラ)」という言葉も定着しました。育児休業制度も整備され、男性の育休取得も当たり前の時代になりつつあります。

ですが、制度は整っても、あの頃私が感じたような「不安」は本当に消え去ったのでしょうか。

本当に大切なのは「制度」+「コミュニケーション」

妊娠中は、体調も心も大きく変化します。今まで当たり前にできていた仕事が急に難しくなったり、先の見えない不安に襲われたりすることも少なくありません。

確かに、会社として就業規則が整っていることも大切なのですが、
働く人にとっては、

「今の業務量は少し厳しいです」

「勤務日数を調整したいです」

と、『安心してSOSを出せる環境』があるかどうかです。

例えば、本人の希望を聞き、会社と十分に話し合ったうえで、一時的に業務量を減らして賃金を見直すステップをとることがあります。ここで最も重要なのは、「本人の意思が尊重され、納得しているか」という点です。

会社が「妊婦だから」と良かれと思って一方的に業務や待遇を変更することと、本人の希望に耳を傾けて一緒に調整することは、似ているようで全く異なります。この境界線を分けるのは、日頃の丁寧なコミュニケーション、そして安心して話し合いのできる職場環境作りです。

人手不足の時代に、誰も孤立させない職場を

現在、多くの企業が人材確保に苦労しています。だからこそ、「結婚・妊娠をきっかけに辞める」ではなく、「妊娠しても、ここなら働き続けられる」と思える環境づくりは、企業にとって優秀な人材に活躍し続けてもらうための最大の投資になります。

この「相談しやすさ」の重要性は、日本人労働者に限った話ではありません。

最近では、日本で働く外国人の方が妊娠した際、言葉の壁や制度への理解不足から周囲に相談できず、一人で抱え込んで孤立してしまうケースもあります。

妊娠や出産は、決して一人で背負うものではありません。

職場でも社会でも、「困っています」「助けてください」と言えること。そして、それを受け止める温かい窓口や支援体制があること。それが、誰も孤立させない持続可能な職場をつくる第一歩です。

誰もが「相談していい」と思える未来へ

20年前、面接室で「仕事とライフイベントは両立できないもの」と諦めそうになっていた私に、伝えたいことがあります。「時代は少しずつ、でも確実に変わっていくよ」と。

制度を整えることはもちろん大切です。しかしそれ以上に大切なのは、一人ひとりが安心して弱音を吐き、相談できる環境をつくることです。

妊娠した人に限らず、育児、介護、自身の病気治療など、私たちは誰もが人生のさまざまな出来事と向き合いながら働いています。

「困った時は、お互い様。だからいつでも相談していいんだよ」

そんな風に声を掛け合える温かい職場づくりを、これからも働く一人の人間として、大切に応援していきたいと思います。

どこに相談したらいい? “Where Can I Get Help?”

悩みがあって、どうしたらよいか分からない時に、日本にある相談先をいくつかご紹介します。身近な人に相談しにくい事は、直接、自分のことを知らない人に相談することで、少し心が軽くなったり、自分の気持ちを落ち着けることもできます。考えすぎて眠れなくなったりする時は、誰かに打ち明ける選択肢もあります。勇気が必要になりますが、一人で抱え込まず、頼って下さい。

If you are struggling with a problem and are not sure what to do, I would like to introduce some support services available in Japan.

When it feels difficult to talk to someone close to you, speaking with a counselor or support worker who does not know you personally can sometimes help ease your mind and bring a sense of calm. If you find yourself overthinking, losing sleep, or feeling overwhelmed, talking to someone is one option you can consider.

Reaching out for help may take courage, but you do not have to carry everything on your own. Please remember that support is available.

まもろうよ こころ|厚生労働省
電話やSNSでの相談窓口につながることができます。
“Mamorouyo Kokoro” (Protect Your Mind) – Ministry of Health, Labour and Welfare (Japan)
This service provides access to counseling and support through telephone and social media (SNS).

働く人の悩みホットライン|一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
職場や家族など、働く人の悩みについての電話相談窓口です。

Working People’s Concerns Hotline – Japan Industrial Counselors Association
A telephone counseling service for workers who are experiencing concerns or difficulties related to their workplace, family life, or other personal matters.

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