皆が言いたいことを言い合えること、お互いにリスペクトがあること、チームとして最大のパフォーマンスを発揮しようと皆が同じベクトルをもっていること等、そんな環境の中で仕事ができる職場が存在するとすれば、どんなに素晴らしいことだろうと思う。現実は、どの職場でもヒトと一緒に仕事をしていくことになるので、人間関係も含め諸々の問題を抱えている。
前回は、一緒に働く人との間のストレスの打開策について、人との違いを受け入れること等、個人個人の心の持ち方について記載をしたが、よく考えてみると、皆がそのような心の持ち方をしようと努めなければ、実現は難しい。例えば、人との違いを受け入れることについても、人によって『こうあるべき』という自分の信じているものや譲れない正義が少なからず存在する為、ぶつかりあいは避けられない。現実に、あの人のこういう態度や言い方がどうしても許せないという気持ちを聞くことはよくある。
働きやすい職場にするために、実際に働く一人一人が『自分にできること』を地道に実践する努力は勿論大切であるが、個人の力には限界がある。そこで、今回は人を管理する立場である会社ができることについて考えてみたい。
例えば、自分の感情をコントロールすることが難しい人が同じ職場に存在し、その人自身と一緒に働く周りの人たちがキツい思いをして仕事をしている場合、会社として皆が働きやすい職場にするためにできることとは何だろうか。
まずは、なぜその人の感情コントロールが難しいのかについて考え、本人と向き合う必要がある。プライベートで何かがあったのかもしれないし、仕事で一人では消化できない壁にぶつかっているのかもしれない。少しの時間でも本人の話を聞く時間を作ることで、本人も自分の気持ちの整理ができることがあるかもしれないし、本人の心の重荷が軽くなるかもしれない。
プライベートな問題自体については、本人が解決しなければならない問題であるが、一時的にでも会社として仕事の量を少し軽くしたり、周囲の人がフォローできる体制を整えることで、その人のいっぱいいっぱいの心の状態が和らぐこともあるように思う。
又、仕事で消化できない壁にぶつかっていて、そのことが原因で感情コントロールが難しくなっているのであれば、その人に任せる仕事内容や、働く時間を見直す等、その人に見合った仕事を与えることを検討することが必要である。勿論、仕事の内容や働く時間の変更は、賃金の変更にもつながる為、本人との話し合いについて慎重に進めなければならない。
二つ目に、本人へのメンタルヘルス対応として、カウンセリングや心療内科等の医師の受診を勧めることも会社ができる重要な役割である。プロにお任せすることで、本人が気づかなかった気持ちを認識することにつながったり、職場での振る舞いが少し安定に向かう可能性は期待できる。
ただ、現実には、なぜ自分が受診しなければならないのかと抵抗をしたり、自分には必要ないと拒否をするケースは多い。そのため、誰が伝えると本人が納得するか、どのように伝えると受け入れてもらえるかを考えながら、話を進める必要がある。
三つ目に、誰もが気持ちよく働ける環境を作るための体制を整え、それを実際に運営していくことである。例えば、困ったときに相談できる窓口があることは、働く人に安心感を与える。問題を抱えている本人よりも、周りで一緒に働く人の方が違和感に気づきやすい為、相談窓口を誰もが気軽に利用できるようにすることで、困りごとが小さなうちに会社として適切に対応することができる。それが、本人は勿論、周りの人の疲弊の軽減にもつながる。
現実には人間はそれぞれ違うため簡単にはいかない事も多いが、まずは個人も会社も一つ一つできることを実践し、問題をクリアにしていくことが、働きやすい職場づくりへの第一歩であるように思う。